訳あり不動産の売り方

雨漏り・シロアリのある家を売るとき 契約不適合責任・免責特約・インスペクションと買取

内容の確認日: 2026年11月4日

雨漏りやシロアリの被害がある家も、売ることはできます。ただし買主が不具合を知らないまま買えば、引き渡しのあとで契約不適合責任を問われます。売主が知っていた不具合は、契約書に免責の特約を書いても、告げなかった責任を免れません。

この記事では、民法562条・566条・572条と、宅地建物取引業法の建物状況調査(インスペクション)の定めを、条文と国土交通省の資料で確かめます。そのうえで、直して売る場合と、現状のまま買取業者に売る場合の違いを整理します。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や宅地建物取引士、建築士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

民法の3つの条文 契約不適合責任のしくみ

瓦屋根の軒先と白壁
写真: Gnu-Bricoleur / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

売買の目的物が「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ときに、売主が負う責任が契約不適合責任です。雨漏りやシロアリの被害は、品質の問題として扱われます。

3つの条文の要点は、次のとおりです。

  • 562条: 買主は、売主に補修などの追完を請求できる。売主は、買主に不相当な負担を課さないなら、買主が求めた方法と別の方法で追完できる。
  • 566条: 買主が不適合を知ってから1年以内に売主へ通知しないと、追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができなくなる。ただし、売主が引き渡しのときに不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この期限の制限はない。
  • 572条: 責任を負わない旨の特約をしても、売主が知りながら告げなかった事実は免れない。

566条の「1年」は、引き渡しから1年ではありません。買主が不適合を知った時から1年です。雨漏りは雨が降るまで気づかないことがあるので、売主が考えるより長く責任が続く場合があります。

契約書に、責任を負う期間や範囲を決める特約を置くことは、民法が572条で前提にしています。ただし、その特約には572条の限界があります。

免責の特約をしても告げなかった事実は残る

売主が自分の家の雨漏りを知っていたのに、「現状有姿、免責」という特約だけで売ると、トラブルのもとになります。572条は、知りながら告げなかった事実を、特約でも免れないと定めています。

実際にどこまで告げればよいかは、次のように考えると整理しやすくなります。

  • 雨漏りがあった場所と時期。直した記録があれば、その業者名と日付。
  • シロアリの被害を受けた、または駆除を行ったこと。駆除の日付と業者、保証書。
  • いまも続いている症状。天井のしみ、床の沈み、柱の傷みなど。
  • 気づいたものの、原因がわからないままの症状。

わからないことは、わからないままを書きます。直した、と書いて実際は一時しのぎだった、という書き方は避けます。告げた内容を書面に残すと、あとで言った言わないにならずにすみます。

仲介を頼むときは、仲介の会社に告げ方を相談します。心理的な事情の告知は事故物件の告知の記事で扱っています。この記事は、建物の傷みに絞っています。

売主が宅地建物取引業者の場合は、別の制限があります。宅地建物取引業法40条は、業者が自ら売主となるとき、民法566条より買主に不利な特約を原則として禁じています。例外は、引き渡しから2年以上とする特約です。一般の人が自宅を売るときは、この条文は当てはまりません。

売る前に建物状況調査を使う

不具合の範囲がわからないまま売ると、あとで買主との間で揉めやすくなります。建物状況調査(インスペクション)で現状を調べて、結果を買主に見せる方法があります。

宅地建物取引業法は、この調査を3つの場面で位置づけています。

  • 34条の2: 媒介契約書に、建物状況調査を実施する者のあっせんの有無を書く。
  • 35条: 重要事項説明で、調査をしたかどうかと、したときは結果の概要を説明する。
  • 37条: 契約書面に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項を書く。

国土交通省の「改正宅地建物取引業法に関するQ&A」(平成29年6月1日現在)には、次のことが書かれています。

  • 調査は、国の登録を受けた講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が行う。講習を修了していない人の調査は、この法律上の建物状況調査には当たらない。
  • 対象は、構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分。雨水の浸入を防止する部分は、一般に外壁・内壁・天井・屋根。
  • 調査は原則として目視と非破壊で行う。敷地内の地中の調査は含まれない。木造の戸建てでは、床下の蟻害や腐朽の調査も行う。
  • 点検口がない、家具で見られない場所は、「調査できなかった」と書かれる。
  • 調査は義務ではない。費用の基準もなく、実施者ごとに違う。費用は依頼者(売主や購入希望者)が負担するのが一般的と考えられる。
  • 重要事項説明の対象になるのは、調査から1年以内のもの。

雨漏りの跡も、蟻害も、調べる範囲に入ります。一方、調査は「いまの状態を見る」ものです。原因の特定や、修繕の見積は別の依頼になります。調べた結果を知った売主は、その内容を告げる必要があります。調べないほうが得、とは言えません。

調査のあとに、既存住宅売買瑕疵保険という選択肢もあります。住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に瑕疵があったとき、補修費用が支払われる保険です。同じQ&Aには、次のようにあります。

  • 加入には、保険法人の登録を受けた検査事業者の検査人が調査するなどの条件がある。
  • 調査結果に「調査できなかった」「劣化事象有り」の記載があるときは、そのままでは加入できない。再調査や修補をして、問題がないと確かめる必要がある。
  • 保険のための検査の有効期限は1年。

雨漏りやシロアリの被害がある家は、直してから再検査を受けるのが基本です。引渡し後にリフォームする予定なら、引渡し前の手続きで「引渡し後リフォーム型」の保険に入れる場合もあります(保険法人に確認)。修理の費用と手間は、売る前に見積を取って確かめます。

現状のまま買取に出すという選択

2階建ての木造アパート
写真: MC MasterChef / CC BY-SA 2.5(Wikimedia Commons)

直す費用を出せない、時間をかけられない、という事情もあります。その場合は、不動産会社が直接買い取る「買取」が選択肢になります。仲介と違い、買主を探す期間がかかりません。

買取で確かめたい点は、次のとおりです。

  • 契約不適合責任をどう扱うか。買取契約の書面にどう書かれるかを、契約の前に読む。
  • 査定の価格に、雨漏りやシロアリの修繕費がどう反映されているか。内訳を聞く。
  • 引き渡しの時期と、残っている荷物の扱い。

買取業者への依頼の手順と、会社の免許番号の確かめ方は買取業者に査定を頼む手順の記事に書きました。1社だけで決めず、複数の会社の査定を比べると、価格の幅がわかります。

契約の前に確かめる6点

ノートパソコンの上に置かれたiPhone
写真: SimonWaldherr / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

最後に、売る前の確認をまとめます。

  1. 雨漏りやシロアリの被害の場所と時期を、思い出せる範囲で書き出す。
  2. 修理や駆除の記録、保証書、領収書を探す。
  3. 仲介か買取かを決める。決めかねるなら、両方の査定を取る。
  4. 建物状況調査をするかどうかを、仲介の会社と相談する。
  5. 契約書の特約欄で、責任を負う期間と範囲を確かめる。
  6. 告げた内容が、重要事項説明書や契約書に書かれているかを読む。

契約書の特約は、読んで終わりにせず、わからない言葉は質問します。必要なら、弁護士や宅地建物取引士に契約書を見てもらいます。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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