相続登記をしていない実家を売るとき 申請義務の期限と過料、相続人申告登記では売れない理由
実家の名義が亡くなった親のままなら、売る前に相続登記をします。不動産登記法第76条の2により、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内の申請が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前に相続した不動産で登記が済んでいないものは、2027年3月31日までが期限です。
簡易な「相続人申告登記」を申し出れば、3年以内の申請義務は果たしたものとみなされます。ただし法務省のQ&Aは、売却や抵当権の設定をするときには相続登記が必要としています。この記事は一般的な情報で、個別の判断は司法書士や法務局などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
相続登記の申請義務と期限

不動産登記法第76条の2第1項は、所有権の登記名義人に相続が開始したとき、相続で所有権を取得した人は、次の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならないと定めています。
- 自己のために相続の開始があったことを知った日
- 所有権を取得したことを知った日
この2つを両方知った日が起算日になります。遺産分割で法定相続分を超えて取得した人は、第2項により、遺産分割の日から3年以内にあらためて申請します。相続人に対する遺贈で取得した人も、同じ義務を負います。
期限を過ぎると、第164条により10万円以下の過料に処せられることがあります。法務省のQ&Aには、次のような事情があれば一般に「正当な理由」があると認められると書かれています。
- 相続人が極めて多く、戸籍の収集や相続人の把握に時間がかかる
- 遺言の有効性や遺産の範囲が争われていて、不動産が誰のものか明らかでない
- 義務を負う人自身に重い病気などの事情がある
- 配偶者暴力の被害者などで、避難を余儀なくされている
- 経済的に困窮し、登記の費用を負担できない
これ以外でも、個別の事情で認められる場合があるとされています。
2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産も対象です。登記が済んでいなければ、2027年3月31日までに申請します。この記事を確認した2026年11月4日の時点で、残りは5か月を切っています。
売る前に相続登記が要る理由

売買による所有権の移転登記は、第60条で、登記権利者(買主)と登記義務者(売主)が共同で申請するのが原則です。登記簿に載っている名義人が亡くなった親のままだと、売主になる相続人は、登記簿の上では所有者ではありません。買主への移転登記を申請するには、先に相続人の名義へ変える必要があります。
相続による移転の登記は、第63条第2項により、登記権利者が単独で申請できます。相続人が自分で申請する手続きも、法務局が案内しています。
自治体の空き家バンクにも、同じ前提があります。村上市のよくある質問は、相続した物件で登記の移転手続きをしていないものは、土地・建物の登記が整理されていないと不動産取引ができないため、空き家バンクに登録できないと答えています。共有名義の物件は、所有者全員が同意し、所有権移転登記が可能なら登録できます。
相続した実家に家そのものの登記がない場合は、未登記の建物がある実家の記事を見てください。ここで扱うのは、土地や建物の登記はあるが、名義が親のままの場合です。
相続人申告登記でできることと、できないこと

遺産分割がまとまらず、3年以内に相続登記ができないときのために、2024年4月1日から相続人申告登記が始まりました。法務省のQ&Aによると、登記簿上の所有者の相続人であることなどを、期限内に登記官へ申し出る制度で、相続人が単独で申し出られます。
不動産登記法第76条の3は、この申出をした人は、第76条の2第1項の義務を履行したものとみなすと定めています(第2項)。遺産分割で所有権を取得したときは、その日から3年以内に所有権の移転の登記を申請します(第4項)。
表は左右に動かして読めます。
| 項目 | 相続登記 | 相続人申告登記 |
|---|---|---|
| 目的 | 所有者の名義を相続人に変える | 相続人であることを申し出る簡易な方法 |
| 3年以内の義務 | 果たす | 果たしたものとみなされる |
| 遺産分割がまとまった後 | 追加の申請は、法定相続分を超えて取得した場合など | 3年以内に所有権移転の登記を別に申請する |
| 売却するとき | そのまま売却の手続きに進める | 相続登記が必要(法務省のQ&A) |
期限が迫っていて遺産分割が済んでいないなら、申出で義務を果たし、売却の前に遺産分割をまとめて相続登記をする順序になります。遺産分割をしていない場合は、法務省のQ&Aにあるとおり、全員が法定相続分で共有している状態になります。共有のまま売るには、全員の同意が要ります。共有の持分だけを売る場合の注意は、共有持分の記事で説明しています。
売却までの順番

売ると決めたときの順番は、おおむね次のとおりです。相続の形によって手順は変わるため、司法書士に確かめながら進めます。
- 登記事項証明書で、土地と建物の名義と地番・家屋番号を確かめる
- 戸籍を集めて、相続人を確定する
- 遺産分割協議で、実家を誰が取得するか(または売ってお金を分けるか)を決める
- 相続登記を申請する
- 不動産会社に売却を相談し、査定・媒介契約・売買契約に進む
自分で相続登記をするときの案内は、法務省のQ&Aが法務局の手続案内(予約制)を紹介しています。司法書士に頼む場合の窓口として、司法書士会の相続登記相談センターも載っています。登録免許税などの費用は、今回開いた資料では確かめられなかったため、法務局か司法書士に確かめてください。
手続きを待つ間に、傷みが進んで売りにくくなるおそれもあります。空き家の管理が行き届かない場合の仕組みは、管理不全空家の記事でまとめています。
売り方の選び方と、税金の特例

名義が整ったあとは、不動産会社に買い手を探してもらう仲介か、会社が自ら買い取る買取かを選びます。仲介は買い手が見つかるまで時間がかかる場合があります。買取は会社ごとの査定で金額が決まります。どちらにするかは、期限、建物の状態、相続人の希望で変わります。複数の会社に査定を頼むと、比べやすくなります。
相続した実家を売るときは、国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」も確かめます。国税庁の説明では、次のような条件があります。
- 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡
- 売却代金が1億円以下
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 耐震基準を満たすか、家屋を取り壊す
- 相続人が3人以上の場合は、令和6年1月1日以後の譲渡で控除額の上限が2,000万円
適用の可否は、所轄の税務署や税理士に確かめます。特例を使うかどうかにかかわらず、先に名義を整えることが売却の前提です。
出典
- 不動産登記法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(令和7年3月27日更新) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
- 村上市(空き家バンク よくある質問・2026年4月1日更新) https://www.city.murakami.lg.jp/site/akiya-bank/akiya-bank-question.html
- 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
いずれも2026年11月4日に確認しました。法令や運用は変わることがあるため、申請の前に法務局の最新の案内を確かめてください。