訳あり不動産の売り方

孤独死があった実家を売るとき 告知の範囲・特殊清掃・相続の手続き

内容の確認日: 2026年11月4日

孤独死があった実家も、売ることはできます。ただし、国土交通省のガイドラインでは、特殊清掃が行われた場合に買主へ告げる対象になります。自然死で特殊清掃もなかった場合は、原則として告げなくてよいとされています。

売る前に決めておく順番は3つです。相続人と名義を整える。特殊清掃や遺品整理の費用と契約を確かめる。不動産会社へ事実をそのまま伝える。この記事は一般的な情報で、個別の判断は不動産会社・司法書士・税理士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

国土交通省のガイドラインが定める告知の範囲

国土交通省は2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。不動産会社が買主や借主へ何を告げるかの考え方をまとめたものです。法律ではありません。ただし、トラブルになったときに行政が監督で参考にするとされています。

並木道に沿って戸建て住宅が並ぶ住宅地
写真: Peka / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

ガイドラインが「告げなくてもよい」とする主な場合は次のとおりです。

  • 老衰や持病による病死などの自然死。
  • 自宅の階段からの転落、入浴中の溺死、食事中の誤嚥など、日常生活の中での不慮の死。
  • 隣の住戸や、買主が日常生活で通常使わない共用部分で起きた死。

ただし、自然死でも例外があります。長期間人知れず放置され、臭気や害虫が出て特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合です。この場合は買主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるとして、告げる側に回ります。孤独死の多くが気になるのはこの点です。

期間の目安にも注意が要ります。ガイドラインに「おおむね3年」とあるのは賃貸借の取引です。特殊清掃が行われることになった死が発覚してから、おおむね3年を過ぎれば借主へ告げなくてよいとされています。売買には年数の区切りがありません。売る場合は、経過年数だけで告知が不要になると考えないほうが安全です。

買主から「過去に人が亡くなったことはありますか」と聞かれたときは、経過した期間や死因にかかわらず、わかっていることを告げる必要があるとされています。ガイドライン全体の読み方は事故物件の告知義務の記事にまとめました。

売る前に済ませたい相続の手続き

実家を売れるのは名義人です。亡くなった親の名義のままでは売れません。まず相続人を確かめます。

福岡法務局の庁舎
写真: Hirho / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

期限のある手続きは3つです。

  • 相続放棄・限定承認: 民法915条は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認か放棄をするとしています。期間は家庭裁判所に申し立てて延ばせる場合があります。相続財産の調査は、承認や放棄の前にしてかまいません。
  • 相続登記: 2024年4月1日から義務になりました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請します。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になりえます(不動産登記法76条の2・164条、法務省のQ&A)。
  • 遺産分割で取得した場合: 分割が成立した日から3年以内に、その内容の登記を申請します。

相続人どうしの話し合いがつかないときは、法務省が「相続人申告登記」を案内しています。相続人の1人が、3年の期間内に登記官へ申し出る簡易な方法です。ただし、この申出だけでは売却や抵当権の設定はできません。売るときは、別に相続登記が必要です。

兄弟姉妹などの共有になる場合は、売却に全員の同意が要ります。持分だけを売る方法は共有持分の記事で扱っています。

特殊清掃と遺品整理を頼むときの注意

特殊清掃は、孤独死などが起きた住まいで、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービスです。ガイドラインはこの説明を総務省行政評価局の2020年3月の調査報告書から引いています。

遺品整理を含めた契約のトラブルについて、国民生活センターが2018年7月に注意を呼びかけています。公表された相談事例は次のとおりです。

  • 見積もりの際にせかされて契約し、作業が始まらないので解約したい。
  • 解約を申し出たところ、高額なキャンセル料を請求された。
  • 作業当日に予定外の料金を請求され、見積金額の2倍の費用になった。
  • 処分しないように頼んだ物を、勝手に処分された。

同センターの助言は、複数社から見積もりを取る、作業内容と費用を見積書で明確にしてもらう、料金とキャンセル料と作業内容を事前に確かめる、残す遺品と処分する遺品を分けておく、の4点です。トラブルになったときは、お住まいの自治体の消費生活センターに相談します。

売却を考えているなら、もう1つ大切なことがあります。いつ特殊清掃が行われたかを、書類で残しておきます。見積書、作業報告書、領収書です。不動産会社が買主へ事実を告げるときの根拠になります。

不動産会社へ伝えることと、買主への告げ方

媒介を行う不動産会社は、売主に「告知書(物件状況等報告書)」への記載を求めるのが通常の流れです。ガイドラインは、売主が事実を故意に告げなかった場合に民事上の責任を問われる可能性があると、あらかじめ売主に伝えることが望ましいとしています。

交差点から見た郊外の住宅地
写真: Peka / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

買主へ告げる内容は、次の4点です。

  • 事案が起きた時期(特殊清掃が行われた場合は発覚した時期)。
  • 場所。
  • 死因(不明ならその旨)。
  • 特殊清掃等が行われた旨。

亡くなった方やご遺族への配慮から、氏名・年齢・住所・家族構成や、具体的な死の態様、発見状況まで告げる必要はないとされています。後日のトラブルを防ぐため、書面で渡すことが望ましいと書かれています。

建物を解体して更地で売る場合は注意してください。ガイドラインの結びに、人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の扱いは、裁判例や実務の蓄積がなく対象にしていないと書かれています。更地にしたから告知が不要になる、とは言えません。この場合の判断は、不動産会社に事実を伝えたうえで相談します。

事故物件に慣れた会社に相談する選択肢もあります。

売ったあとの税金 空き家の3,000万円特別控除

水戸税務署の庁舎
写真: Miyuki Meinaka / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

亡くなった親が1人で暮らしていた実家を売る場合は、「被相続人居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」が使えることがあります。国税庁のタックスアンサーNo.3306によると、主な条件は次のとおりです。

  • 売る期間: 2016年4月1日から2027年12月31日まで。
  • 売る期限: 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。
  • 建物: 1981年5月31日以前に建築され、区分所有登記がされていないこと。相続の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいないこと。
  • 売却代金: 1億円以下。
  • 家屋を売る場合は、売る時に耐震基準を満たしていること(2024年1月1日以後の譲渡は、売った翌年の2月15日までに耐震基準を満たすか全部を取り壊す場合も可)。取り壊して敷地を売る場合は、相続から取り壊しまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと。
  • 2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上いる場合、控除額の上限は1人2,000万円。

市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」などを確定申告に添付します。細かな条件が多いため、売買契約の前に税務署か税理士へ確かめてください。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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