未登記の建物がある実家を売るとき 表題登記の義務と過料、相続登記とのちがい
登記されていない建物がある実家を売るときは、売る前に建物の表題登記を考えます。不動産登記法47条1項は、表題登記がない建物の所有権を取得した人に、取得の日から1か月以内の申請を求めています。正当な理由なく怠ると、同法164条により10万円以下の過料の対象になります。
この表題登記と、2024年4月に始まった相続登記の義務化は、別の手続です。表題登記は建物の存在と形を登記簿に載せる手続で、相続登記は所有者の名義を変える手続です。この記事は一般的な情報で、個別の判断は土地家屋調査士や司法書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
未登記の建物とは

未登記の建物は、法務局の登記簿に載っていない建物です。土地の登記はあっても、その上の建物の登記がない状態を指します。古い実家や、増築した離れ、建て替えのときに登記しなかった家などで起こります。
建物の登記は、2つの部分に分かれます。最初に建物の所在や種類、構造、床面積を載せる「表題登記」があり、そのあとに所有者の権利を載せる「所有権の保存の登記」があります。法務局の案内でも、建物を新築した場合は、表題登記と所有権の保存の登記が必要とされています。
未登記かどうかは、法務局で建物の登記事項証明書を請求すると分かります。請求には家屋番号が要りますが、未登記の建物には家屋番号がありません。そのため、土地の地番から調べるか、法務局に相談します。登記事項証明書の手数料は、書面請求で600円です(法務省の令和7年4月1日からの表)。
表題登記の申請義務と過料

不動産登記法47条1項は、新築した建物、または区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した人について、次のように定めています。
- 対象: 新築した建物の所有者、または表題登記がない建物の所有権を取得した人
- 期限: 所有権の取得の日から1か月以内
- 内容: 表題登記の申請
同法164条1項は、この申請を正当な理由なく怠った場合に、10万円以下の過料を科すと定めています。過料の額は裁判所が決めます。
条文の文言は「所有権を取得した者」です。相続で実家を受け継いだ場合に、1か月の期限をどの日から数えるかは、この記事では確かめられませんでした。法務局か土地家屋調査士に、具体的な事情を伝えて確かめてください。
長く未登記だった建物は、すでに期限を過ぎていることがあります。その場合の扱いは、個別の事情で違うため、法務局か土地家屋調査士に確かめます。
相続登記の義務化とのちがい

相続登記は、不動産を相続した人が、所有者の名義を自分に変える登記です。法務省の案内によると、2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務になりました(不動産登記法76条の2)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です(同法164条1項)。
施行前に始まった相続も対象です。相続を知った日が2024年4月より前で、まだ登記していない場合の期限は、2027年3月31日です。登記官はまず申請を催告し、それでも申請しない場合に、裁判所へ通知します。
表は左右に動かして読めます。
| 表題登記 | 相続登記 | |
|---|---|---|
| 登記の内容 | 建物の所在・種類・構造・床面積を登記簿に載せる | 所有者の名義を相続人に変える |
| 根拠 | 不動産登記法47条1項 | 不動産登記法76条の2 |
| 期限 | 所有権の取得の日から1か月以内 | 相続を知った日から3年以内(施行前の相続は2027年3月31日まで) |
| 過料 | 10万円以下(164条1項) | 10万円以下(164条1項) |
| 専門家 | 土地家屋調査士 | 司法書士・弁護士 |
相続登記を急げない事情がある人のために、相続人申告登記があります。法務省の案内では、相続人が自分が相続人であると申し出るだけで、基本の義務を果たせる簡易な制度です。ただし、持分は登記簿に載らないため、売るときには改めて相続登記が要ります。
未登記の建物を相続した場合の相続登記の扱いは、法務省のQ&Aでは説明されていません。まず表題登記を済ませる必要があるかどうかも含め、法務局か専門家に確かめます。実家を売る手続全体は、孤独死があった実家を売る記事に書きました。
土地家屋調査士に頼む

法務局の案内には、建物の表題登記には図面の作成が必要で、登記の申請は土地家屋調査士に依頼できるとあります。図面は、建物の位置を示す建物図面と、各階の形を示す各階平面図です。
法務省のQ&Aも、表題登記の質問は土地家屋調査士に相談できるとしています。高知地方法務局の案内では、高知県土地家屋調査士会が、相続した建物が未登記や取り壊されている場合などの相談を受けています。他の県でも土地家屋調査士会が相談窓口を設けていることがあります。お住まいの県の調査士会のページで確かめてください。
依頼の前に、次のものを手元に置きます。
- 土地の登記事項証明書
- 固定資産税の課税明細(建物が課税されているかを確かめるため)
- 建築確認済証、工事請負契約書など、建物の建築を示す書類(あれば)
- 建物の写真、間取りが分かる図面(あれば)
費用は、建物の大きさや調査の内容で変わります。複数の事務所に見積をもらって比べます。
登記がないまま売れるのか

未登記のままで売る方法があるのか、買い手が見つかるのか、住宅ローンが使えるのかは、取引の相手や金融機関の条件によります。今回、法務省や国土交通省の資料では確かめられませんでした。不動産会社に、未登記であることを最初に伝えて確かめます。
建物に傷みが進んでいる場合や、事故があった場合は、買取の相談が候補に入ることがあります。事故のある物件の告知は、告知義務の記事で説明しています。
手順の目安は次のとおりです。
- 法務局で土地と建物の登記を調べ、未登記かどうかを確かめる
- 名義が亡くなった方のままの土地は、相続登記の期限を確かめる
- 土地家屋調査士に、建物の表題登記を相談する
- 不動産会社に、登記の状況を伝えて売り方を相談する
出典
- e-Gov法令検索「不動産登記法」第47条・第76条の2・第164条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
- 法務局「建物を取り壊した/建物を新築した」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudousan5.html
- 高知地方法務局「土地及び建物の相続登記の手続案内について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/kochi/page000096.html
- 法務省「登記手数料について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/
いずれも2026年11月4日に確認しました。法改正や運用は変わることがあります。