訳あり不動産の売り方

擁壁やがけ条例に当たる土地を売るときの確認点 盛土規制法・検査済証・重要事項説明

内容の確認日: 2026年11月4日

擁壁があるだけで、土地が売れなくなるわけではありません。売るときに確かめたいのは、擁壁の検査済証などの書類があるか、土地が盛土規制法の規制区域に入っているか、がけ条例の対象になるか、の3点です。これらは買主が建物を建てるときの制約や、重要事項説明の内容につながります。

擁壁やがけ条例の扱いは、都道府県と市区町村で違います。この記事は一般的な情報で、個別の判断は不動産会社、建築士、弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。再建築ができない土地の売り方は、再建築不可の物件の売り方で扱っています。

擁壁・がけ条例・盛土規制法の違い

似た言葉が並ぶので、先に整理します。

  • 建築基準法第19条第4項: 建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合には、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。
  • がけ条例: 自治体が、がけの近くに建物を建てるときの制限を条例で定めたもの。呼び名は通称で、条例の名前と条文は自治体ごとに違う。
  • 盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法): 宅地造成や盛土などに伴う崖崩れや土砂の流出による災害を防ぐ法律。2023年5月26日に施行された。

がけ条例の例を3つ挙げます。

  • 横浜市建築基準条例第3条: 高さ3メートルを超える崖(勾配30度超)の下端から、崖の高さの2倍以内に建築物を建てるか敷地を造成するときは、規則で定める擁壁または防土堤が必要。例外が7つ定められている。
  • 福岡市建築基準法施行条例第5条: 福岡市の資料によると、敷地の高低差が3メートルを超える場合は、擁壁から決められた距離をあけて建てるか、「がけ地」に対する安全性を確認する。
  • 東京都建築安全条例第6条: 大田区のページによると、がけの高さの2倍以内の範囲では第6条第2項の規定がかかり、規制範囲内では高さ2メートルを超える擁壁を設ける。

数字や例外は条例ごとに違います。土地のある市区町村の条例を確かめてください。

盛土規制法の規制区域に入っているとき

盛土規制法は、都道府県知事などが、盛土等で人家に被害を及ぼしうる区域を「宅地造成等工事規制区域」「特定盛土等規制区域」に指定する仕組みです。国土交通省のページは、土地の用途を問わず全国一律の基準で規制する制度だと説明しています。

戸建て住宅が並ぶ住宅地
写真: NISHIGUCHI,Masahiro (Nisiguti) / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

規制区域に指定された土地を売るとき、知っておきたい点は次のとおりです。

  • 国土交通省関連のQ&Aには、盛土・切土や擁壁などの工事を行わない限り、規制区域に指定されただけで特に手続きは必要ないと書かれています。
  • 法第22条第1項は、規制区域内の土地の所有者、管理者、占有者に、土地を常時安全な状態に維持するよう努めることを求めています。
  • 同条第2項は、都道府県知事が、災害防止のため必要と認めるとき、擁壁等の設置や改造などの措置を勧告できるとしています。
  • 法第23条は、擁壁等が設置されていないか極めて不完全で、放置すると災害のおそれが大きいときに、改善命令を出せるとしています。
  • 規制区域内で擁壁等に関する工事を行うときは、許可を受けた場合を除き、着手する14日前までに知事に届け出る必要があります(第21条第3項)。

区域の指定は自治体によって違います。横浜市は、2025年4月1日に市の全域を宅地造成等工事規制区域に指定しました。以前は市域の約62%でした。区域に入っているかは、都道府県や市の盛土規制法の担当窓口で確かめられます。

検査済証のない擁壁は、どう見られるか

擁壁の検査済証は、擁壁の断面、支持地盤、裏込め材、排水といった外から見えない部分が、築いたときに適切に設計・施工・管理されたことを示す書類です。福岡市は、建築確認の審査で敷地内の既存擁壁の安全性を確かめる必要があるとして、確認方法を資料にまとめています。

福岡市の資料(2021年9月一部改正)に書かれている考え方を紹介します。

  • 検査済証があれば、見えない部分の施工は適切と判断する
  • 検査済証がない場合は、外観の状況チェックシートで異常がないか調べる。自分の土地の擁壁なら、維持管理の大切さを説明し、土地を譲渡するときはその取扱いを引き継ぐことの確約を得る
  • 空石積み、二段の擁壁、増積み、張り出し床版などは「機能上問題のある擁壁」とされ、自分の土地の擁壁でがけ条例の対象にならない場合は、外観チェックで異常があれば、原則として築造替えを行う

これは福岡市の建築確認での運用で、全国共通の決まりではありません。ただ、買主が家を建てるときに擁壁が問題になるという流れは、他の自治体でも起きえます。売る側は、擁壁の検査済証、造成のときの許可書類、図面、工事の写真があれば、まとめておくと買主や不動産会社への説明に使えます。

書類が見つからないとき、擁壁を調べて安全性を示せるかどうかは、自治体と建築士に相談して決めます。擁壁の補強や造り替えの費用は、公式の資料から目安を確かめられませんでした。数字は載せません。

重要事項説明で扱われること

不動産会社が売買を仲介するとき、宅地建物取引業法第35条により、買主に重要事項説明をします。説明する項目のひとつが、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限の概要です(第1項第2号)。

日野市役所の庁舎
写真: 根川孝太郎 (Kotaro Negawa) / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

どの法令が対象かは、宅地建物取引業法施行令第3条に挙がっています。売買の場合の一覧には、次のものが含まれます。

  • 宅地造成及び特定盛土等規制法の第12条第1項、第16条第1項、第27条第1項、第28条第1項、第30条第1項、第35条第1項
  • 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項
  • 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の第10条第1項と第17条第1項

同じ政令は、これらの規定に基づく命令や条例の規定による制限も含むと書いています。国土交通省関連のQ&Aも、規制区域内で不動産取引を行う場合は、重要事項説明で盛土規制法に基づく制限を説明するとしています。

がけ条例がこの一覧のどの規定に当たるかは、条例の根拠によって違うため、この記事では確かめられませんでした。どの制限が説明の対象になるかは、仲介する不動産会社に確認してください。

売主の側には、知っている事実を伝える意味もあります。民法第572条は、契約不適合の責任を負わない特約をしていても、知りながら告げなかった事実は責任を免れないとしています。擁壁のひび割れや傾き、がけ条例の対象になる事実を知っているなら、不動産会社に話してください。

売り方を考える

夕暮れの住宅地
写真: 亜細な日常 / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

擁壁やがけの問題がある土地は、大きく次の道があります。

  1. 現状のまま、制約を説明して売る
  2. 擁壁を調査・補修してから売る
  3. 買取を行う事業者に相談する

どれが向くかは、擁壁の状態、条例の対象かどうか、買主が建てたい建物で変わります。まず、自治体の窓口で土地の条件を確かめ、複数の不動産会社に査定を頼むと比べられます。

調査や補修には費用と時間がかかります。補修してから売るか、現状で売るかの比較は、見積もりを取ってから判断してください。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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