訳あり不動産の売り方

市街化調整区域の土地・家を売るとき 都市計画法の許可と属人性、買い手が限られる理由

内容の確認日: 2026年11月4日

市街化調整区域の土地や家は、売れます。ただし買主が自由に家を建てられる土地ではないため、買い手が限られます。売る側は、自分の土地の建築の経緯と、許可の種類を先に調べておく必要があります。

この記事は、都市計画法の29条・34条・43条を条文で確かめ、福岡県・相模原市・岡山市の公式の資料から、売却で問題になる「属人性」を整理します。活用ではなく売却に絞ります。許可の扱いは自治体で違うため、決めつけずに書きます。この記事は一般的な情報で、個別の判断は市区町村の都市計画の担当窓口、宅地建物取引士、行政書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

市街化調整区域とは 29条・34条・43条の役割

稲が実る田と隣の住宅
写真: Maarten Heerlien / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)

都市計画法7条3項は、市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定めています。住宅や店舗を建てる開発を、市街化区域のようには認めない区域です。

3つの条文の役割は、次のとおりです。

  • 29条: 都市計画区域内で開発行為をしようとする者に、あらかじめ都道府県知事などの許可を求める。開発行為とは、主として建築物を建てる目的で行う土地の区画形質の変更(4条12項)。
  • 34条: 市街化調整区域の開発行為は、1号から14号までのどれかに当たると認められないと許可されない。
  • 43条: 開発許可を受けた区域以外の市街化調整区域で、建築物を新築するときや、改築・用途変更をするときに、知事の許可を求める。許可の基準は、33条・34条の例に準じて政令で定める(2項)。

29条と43条は、開発する人、建てる人に許可を求める条文です。土地や家を売ること自体を禁じる条文ではありません。売ることはできても、買主がそこに家を建てるとき、建て替えるとき、用途を変えるときに許可が要ります。買主はこの許可が取れるかを見て買うため、売り先が限られるのです。

34条には、周辺の住民向けの日用品店舗(1号)、条例で指定した区域の開発(11号)、条例で定めた区域・目的・用途の開発(12号)、線引きの際に権利を持っていた人が6か月以内に届け出た開発(13号)、開発審査会の議を経た開発(14号)などがあります。自治体の「開発許可の手引」は、この号の中身を具体的な基準にしたものです。

既存宅地の制度はなくなっている

石を載せた板葺き屋根の古い木造民家
写真: タクナワン / CC0(Wikimedia Commons)

調整区域の売却で、古い話が出てくることがあります。「既存宅地だから建てられる」という説明です。既存宅地の制度は、昭和49年の都市計画法の改正でできて、昭和50年(1975年)4月1日から始まりました。平成12年の改正で廃止され、平成13年(2001年)に終わっています。

福岡市のページ(2024年4月1日更新)は、廃止後の経過措置を次のように説明しています。

  • 確認を受けた土地は、自己の居住や業務用の建築について、都市計画法附則6条により5年間は従前どおり許可が不要だった。
  • 福岡市は独自の経過措置として、手続きをしていなかった土地に43条の建築許可を求める取り扱いをし、これは2006年5月17日に終了した。

つまり、いまは「既存宅地だから許可が要らない」とは言えません。売るときに「昔は建てられた土地」と聞いたら、現在の許可の基準を市区町村に確かめます。

岡山市の審査基準は、2026年4月1日に作成され、同年8月7日に修正された資料です。市の条例が廃止されたあとの、属人性の運用を載せています。古い資料や古い説明をそのまま信じず、市区町村の最新の基準を見てください。

属人性 売れる家と売りにくい家の分かれ目

住宅地のそばに広がる茨城県の水田
写真: LERK / CC BY 3.0(Wikimedia Commons)

売却で最も大きな問題は、属人性です。許可を受けた人にだけ使うことが認められた建物のことで、買主が入れ替わると許可が使えなくなるおそれがあります。

福岡県の資料「いわゆる『属人性』について」(Q&A番号36)は、次のように説明しています。

  • 属人性のある建築物は、使用者が制限されている建築物。例は、農林漁業従事者用住宅、分家住宅、既存集落内の自己用住宅、既存権利者の届出にもとづく建築物。
  • 使用者を変える(属人性を解除する)には、都市計画法43条の建築許可が必要。
  • 属人性のない建築物は、第三者でも、使用や居住や建て替えができる場合がある。例は、線引きの日前からの既存建築物、旧既存宅地制度にもとづく建築物、条例で指定した区域の建築物。

相模原市の案内「市街化調整区域内での自己用住宅の建築について」は、さらに強い書き方をしています。分家住宅や指定既存集落内の住宅などの許可要件で建てた住宅は、「第三者に売却したり貸家にすることはできません」と書いています。申請者は婚姻して世帯を持つ人などの要件もあります。許可は、人の事情に結びついているのです。

岡山市の審査基準は、別の運用を示しています。条例の廃止(令和8年4月1日)の後は、34条11号の許可を受けた建築物の属人性を、原則として問わないとしています。許可を受けた人以外が同じ用途の建築物を新築しても、許可は不要としています。自治体によって扱いが変わりうる点です。

3つの資料を並べると、次のようになります。

資料属人性の扱い
福岡県分家住宅などは属人性あり。使用者の変更には43条の許可が必要
相模原市分家住宅・指定既存集落内の住宅などは、第三者への売却と貸家にはできない
岡山市34条11号(旧8の3)の建築物は、原則として属人性を問わない。審査会の案件は、運用基準(17)に所有権の移転(属人性)の定めがある

「同じ調整区域の家」でも、許可の種類で結論が変わります。まず、建築のときに受けた許可の種類を調べます。許可書や、建築確認の書類が手がかりです。

買い手が限られる理由

建物に囲まれた更地
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

調整区域の土地や家に、買い手が少なくなる理由を整理します。

  1. 買主が建築できるかが、自治体の基準しだい。建てる人の事情(親族、居住歴など)を要件にする自治体もある。相模原市の分家住宅には、本家世帯の要件がある。
  2. 属人性のある家は、買主が許可を引き継げない場合がある。
  3. 農地は、住宅を建てるのに転用の許可が要る。相模原市の案内も、農地の場合は転用許可が受けられることを要件にしている。
  4. 市の指定区域や、接道、下水道の接続といった条件がつく。相模原市の非農家住宅では、下水道への接続が必要とされている。

これらを買主に説明する負担は、売主側にも回ってきます。仲介の会社に頼むときは、調整区域の取り扱いに慣れているかを聞くと安心です。道路に面していない土地の売り方は、再建築不可の物件の記事にあります。

売り先は、おおむね3つに分けられます。

  • 隣地や近くの農家など、そのまま使える買主。
  • 許可の条件に合う個人。条件は自治体の手引で確かめる。
  • 調整区域の土地や訳あり物件を買い取る不動産会社。

買取では、会社が許可の見込みを見たうえで価格を出します。許可の見込みしだいで、価格が変わることがあります。複数の会社に査定を頼み、理由を聞いて比べます。

売る前に市区町村で確かめる5点

阿南市役所の庁舎
写真: Araisyohei / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

売りに出す前に、市区町村の都市計画か開発許可の担当窓口で確かめることを挙げます。

  1. その土地が市街化調整区域か。区域区分は、市区町村の窓口やホームページで調べられることが多い。
  2. 建物があるなら、いつ、どの許可(または届出)で建てたか。線引きの日前の建物かどうか。
  3. 許可に属人性があるか。買主に使用者を変えるとき、43条の許可が取れる見込みはあるか。
  4. 買主が建て替えるときの条件。建て替えが許可の対象になるか、どの基準で判断するか。
  5. 農地なら、住宅を建てるのに転用の許可が要る。市区町村の農地の担当窓口で確かめる。

窓口に聞くときは、地番、建築の時期、手元の許可書や検査済証を用意します。「売りたいが、買主が建て替えられるか」と、目的を伝えるのがよい聞き方です。事前相談の扱いは自治体で違います。

擁壁やがけがある土地の確認は擁壁・がけ条例の記事、私道の通行の承諾は私道の記事を見てください。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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