訳あり不動産の売り方

私道の持分がない家を売るとき 通行・掘削の承諾と重要事項説明

内容の確認日: 2026年11月4日

私道の持分がない家も、売ることはできます。ただし、買主と不動産会社が確かめるのは2点です。前の道が建築基準法の道路かどうか。そして、その私道を通る権利と、水道管などを掘って通す権利が書面で残っているかどうかです。

持分がないこと自体は欠点とは決まっていません。承諾書の有無や内容、道の種類によって、売りやすさが変わります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は不動産会社・弁護士・司法書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

前の道は建築基準法の道路か

家を建て替えるには、敷地が建築基準法上の「道路」に2メートル以上接している必要があります(建築基準法43条1項)。道路は原則として幅員4メートル以上のものです(同法42条1項)。

建築基準法のセットバックが進む東京・世田谷の道
写真: Akonnchiroll / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

私道には種類があります。主なものは次の3つです。

  • 特定行政庁から位置の指定を受けて築造した道(位置指定道路。42条1項5号)。
  • 幅員4メートル未満でも、建築物が立ち並んでいた道で特定行政庁が指定したもの(2項道路、いわゆるみなし道路)。道路の中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされます(42条2項)。
  • どちらにも当たらない通路。この場合は建築基準法上の道路でない可能性があり、再建築ができないことがあります。

接道義務には例外もあります。道路に当たらない幅員4メートル以上の道に2メートル以上接し、利用者が少数であるなどの基準に合う建築物で、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めたものは、接道義務の適用を外れます(43条2項1号)。基準は国土交通省令で定められているため、窓口で確かめます。

種別は市区町村の窓口や地図で確かめます。横浜市は「指定道路図」を地図システムで見る方法を案内し、地図で判断できないときは建築指導課に相談票と資料を持参する流れです。福岡市は建築指導課の窓口で確認を受け付けています。どちらも電話では種別を答えていません。取り違えの影響が大きいためとされています。お住まいの市区町村で、窓口と方法を確かめてください。

接道を満たさない家の売り方は再建築不可の記事で説明しています。

持分がないと、通る権利はどうなるか

持分がない私道では、通行は所有者の承諾に支えられています。書面の「通行承諾書」があると、買主にも説明しやすくなります。

住宅が並ぶ東京・谷中の細い道
写真: Joe Mabel / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

承諾書がない場合の拠りどころは、法律と判例です。

  • 民法210条: 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行できます。通行の場所と方法は、必要で、かつ他の土地の損害が最も少ないものを選びます(211条)。通行する側は償金を払います(212条)。
  • 最高裁判所の2000年1月27日判決(車止め撤去請求事件): 判示事項は「みなし道路の通行妨害と妨害排除請求権」です。裁判要旨の冒頭は、建築基準法42条2項の指定を受け、現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者に触れています。ただし、この事件では金属製ポールの撤去請求は認められませんでした。

判決は、事案の事情で結論が変わります。持分がなくても通れるとは限りません。通行に関する争いが見込まれるときは、弁護士に確かめます。

水道管やガス管を通す「掘削」の承諾

家を売るとき、買主が気にするのは通行だけではありません。水道・下水・ガスの管を私道の下に通す、または既存の管を修理するための掘削です。

道路に設置されたマンホールの蓋
写真: Daderot / CC0(Wikimedia Commons)

2023年4月1日に施行された民法の改正で、ライフラインの設備設置権が条文になりました。民法213条の2の要点は次のとおりです。

  • 他の土地に設備を設置しなければ、電気・ガス・水道水などの継続的給付を受けられない土地の所有者は、必要な範囲で設備を設置できます。他人の設備を使う権利も同じ条文にあります。
  • 場所と方法は、他の土地のために損害が最も少ないものを選びます。
  • 設置する人は、あらかじめ目的、場所、方法を土地の所有者などに通知します。
  • 損害に対して償金を払います。他人の設備を使うときは、利益を受ける割合に応じて維持費を負担します。

法務省の「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」の概要は、設備設置権が成り立つ場合は、承諾書がなくても民法上は設備を設置できると書いています。また、不当な承諾料を求められても応じる義務はないと明記しています。ただし、自力での執行は禁止されています。拒まれたときは、妨害禁止の判決を求めることになります。

実際に管を引く工事は、水道局やガス会社の手続きも関わります。買主の住宅ローンや建て替え計画に合わせ、掘削承諾書の有無は早めに確かめておきます。

売るときの重要事項説明で何が説明されるか

不動産会社は、売買契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士を通じて重要事項を書面で説明します。宅地建物取引業法35条1項は、売買では次の事項を挙げています。

杉並区の低層の住宅地
写真: Ximonic (Simo Räsänen) / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
  • 建築基準法などの法令に基づく制限の概要(2号)。
  • 私道に関する負担に関する事項(3号)。
  • 飲用水、電気、ガスの供給と排水のための施設の整備状況。整備されていない場合は、その見通しと特別の負担(4号)。

私道の持分がないことや、通行・掘削の承諾の有無は、この説明の中で取り上げられる事項です。売主は、承諾書や管の位置がわかる資料を不動産会社に出します。わからない点は、わからないまま伝えるほうが、後のトラブルを減らします。

売る前に整えておくこと

地面に埋められた境界標
写真: Osumi Akari / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

売却の準備として、次の順に進めると、買主への説明がしやすくなります。

  1. 前面道路の種別を、役所の窓口で確かめる。
  2. 私道の所有者を、法務局の登記事項証明書で確かめる。
  3. 通行承諾書と掘削承諾書があるか探す。なければ、所有者に書面で依頼する。
  4. 承諾書に、売却後に買主が引き継げる旨が読み取れるか確かめる。
  5. 不動産会社に、道の種別・承諾書・管の状況を伝える。

所有者が亡くなっていたり、所在がわからなかったりする場合もあります。法務省のガイドラインの概要は、財産管理制度を使い、裁判所が選ぶ財産管理人から私道工事の同意を得る方法も示しています。この手続きは専門家と一緒に進めます。

権利関係が複雑な家は、通常の売却と同じ会社では進まないことがあります。訳あり物件を扱う会社に相談する選択肢もあります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

あわせて読む