訳あり不動産の売り方

売れない土地を国庫帰属制度で手放すか売るか 費用・要件・統計で比べる

内容の確認日: 2026年11月4日

売れない土地を手放す方法として、相続土地国庫帰属制度があります。国に引き取ってもらうには、審査手数料として土地1筆あたり1万4千円を申請のときに納めます。承認されたら、10年分の管理費相当の負担金を納めます。負担金は、土地の区分によって最低でも20万円です。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。建物がある土地、境界が明らかでない土地、崖のある土地などは、申請できなかったり承認されなかったりします。審査には8か月程度かかり、却下や不承認でも審査手数料は戻りません。売却や隣の土地の所有者への打診と、費用と日数を並べて決めます。この記事は一般的な情報で、個別の判断は法務局の相談窓口や司法書士、土地家屋調査士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

国庫帰属制度の基本 誰が何を払うか

さいたま地方法務局の建物
写真: Ebiebi2 / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

制度の根拠は、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律です。第2条第1項は、相続等によって土地の所有権を取得した人が、法務大臣に国庫への帰属の承認を申請できると定めています。「相続等」には遺贈も含まれます。土地が共有の場合は、共有者の全員が共同で申請します。

法務省の「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版・令和7年10月版)」にある流れは次のとおりです。

  1. 土地を管轄する法務局(本局)に、予約をとって事前相談する
  2. 審査手数料分の収入印紙を貼った申請書を、土地を管轄する法務局の本局に出す(郵送も可)
  3. 書類の審査と、法務局による実地調査を受ける
  4. 承認か不承認かの通知を受ける。承認なら負担金を、通知が届いた日の翌日から30日以内に納める
  5. 負担金を納めた時点で、土地の所有権が国に移る

法10条第3項は、30日以内に負担金を納めないと承認が効力を失うと定めています。申請書類は申請者が自分で作ります。弁護士、司法書士、行政書士は書類の作成を代行できます。

費用は2種類です。

表は左右に動かして読めます。

費用金額根拠
審査手数料土地1筆あたり1万4千円施行令第3条
負担金土地の区分と面積で決まる。20万円が下限法第10条、施行令第5条

負担金の決め方は、施行令第5条にあります。市街化区域内(区域区分のない都市計画区域では用途地域内)の宅地と、主に農地の一部(市街化区域内、農用地区域内、土地改良事業の区域内)と、主に森林として使われている土地は、面積に応じた計算式で決まります。それ以外の土地は一律20万円です。たとえば市街化区域内の宅地で100平方メートルなら、施行令の表(50平方メートル超100平方メートル以下)で「面積×2,720円+27万6千円」となり、54万8千円です。実際の額は、法務局の通知で確かめます。

申請できない土地と承認されない土地

この制度は、申請の入り口で断られるもの(却下)と、審査のあとで断られるもの(不承認)に分かれています。

法第2条第3項は、次の土地を申請できないと定めています。

  • 建物がある土地
  • 担保権や、使用・収益を目的とする権利が設定されている土地
  • 通路など、他人による使用が予定される土地(現に通路に使われている土地、墓地内の土地、境内地、水道用地・用悪水路・ため池の土地)
  • 土壌汚染対策法の特定有害物質で汚染されている土地(基準を超えるもの)
  • 境界が明らかでない土地や、所有権の存否や範囲に争いがある土地

申請できても、法第5条第1項の次の土地は承認されません。

  • 崖(勾配30度以上で高さ5メートル以上)があり、管理に過分の費用や労力がかかる土地
  • 管理や処分の邪魔になる工作物、車両、樹木などが地上にある土地
  • 除去しないと管理や処分ができない物が地下にある土地
  • 隣の土地の所有者などと争わないと管理や処分ができない土地(袋地で通行が妨げられている場合など)
  • 災害の危険を防ぐ措置が要る土地、動物が生息して被害が出るおそれのある土地、国が追加で森林を整備する必要がある土地など、管理や処分に過分の費用や労力がかかる土地

がけ条例の対象になる土地を売る場合の注意は、擁壁やがけ条例に当たる土地を売るときの確認点に書きました。境界が分からない土地は、申請前に土地家屋調査士に相談するよう法務省の案内も勧めています。

法務省の統計で見る承認と却下の数

舗装や区画のない広い空き地
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

法務省は、制度の運用状況の統計を公開しています。令和8年9月30日現在の速報値(令和8年10月19日公開)は次のとおりです。

項目件数
申請6,125件(田・畑2,372件、宅地2,135件、山林928件、その他690件)
帰属3,231件(宅地1,208件、農用地1,013件、森林229件、その他781件)
却下86件
不承認103件
取下げ1,162件

却下の理由で多いのは、添付書類の提出がなかった(37件)、境界が明らかでない(23件)、現に通路として使われている(22件)です。不承認では、地上に工作物や車両、樹木などがある(49件)、国による追加の整備が必要な森林(37件)、災害の防止措置が必要(11件)が多くなっています。1件に複数の理由が認められる場合があります。

取下げの内訳も参考になります。有効活用の見込みが生じたものが595件、却下・不承認であることが判明したものが415件、その他が152件です。有効活用の例として、法務省は「自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した」「隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった」「農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった」を挙げています。

この数字は速報値で、更新されます。承認された割合を求める場合は、審査中の件数も含まれる点に気をつけてください。

売却や隣地への打診と比べる

建物に囲まれた更地
写真: Syced / CC0(Wikimedia Commons)

国庫帰属は、買い手や引き取り手がいない土地の最後の手段として考えます。先に売却と隣地への打診を試して、だめだったら申請する順番が現実的です。ただし、申請中でも承認の前なら取り下げられるので、並行して動くこともできます(施行規則第7条。承認後は取り下げられません)。

表は左右に動かして読めます。

国庫帰属売却隣の土地の所有者へ打診
手元に入る額入らない。費用がかかる売れれば代金が入る譲渡や贈与の条件による
主な費用審査手数料1筆1万4千円と負担金(20万円〜)仲介手数料、測量や境界確認、登記の費用など測量や登記の費用。条件を話し合う
時間の目安審査に8か月程度(法務省の案内)買い手が見つかるまで不確定相手の事情しだい
向かない土地建物がある、境界が不明、崖や工作物があるなど用途が限られる、接道がないなど隣が応じない場合

売却では、不動産会社の仲介手数料に上限があります。国土交通省の資料によると、令和6年7月1日から、価格が800万円以下の宅地建物(低廉な空家等)の媒介では、原則の上限を超えて報酬を受けられる特例があります。上限は30万円の1.1倍(税込33万円)です。使用の状態は問われません。国土交通省の通達の解説は、媒介契約の締結にあたり、あらかじめ上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意する必要があるとしています。価格の低い土地を売るときは、契約前に報酬額を書面で確かめます。

買い手がつきにくい土地でも、訳あり物件を扱う買取業者に査定を頼む方法があります。再建築ができない土地は再建築不可の物件の売り方、市街化調整区域の土地は市街化調整区域の土地・家を売るときで説明しています。

手放す順番と相談先

地面に埋められた境界標
写真: Osumi Akari / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

次の順で進めると、無駄な費用を減らせます。

  1. 登記事項証明書で、名義と地目、地積、抵当権などの権利を確かめる
  2. 現地で、境界標、建物、工作物、樹木、車両、崖の有無を確かめる
  3. 売却の査定と、隣の土地の所有者への相談を試す
  4. どちらも難しければ、法務局で国庫帰属の事前相談を予約する
  5. 相談で聞いた内容に沿って、書類をそろえて申請する

共有になっている土地は、共有者全員の同意と共同申請が要ります。共有持分だけを手放す方法は共有持分だけを売る方法と注意点を見てください。

事前相談は予約制で、土地の所在地を管轄する法務局の本局に申し込みます。遠方の土地なら、近くの本局でも相談できると法務省の案内に書かれています。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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