境界が決まっていない土地を売るとき 筆界と所有権界の違い、筆界特定制度の手数料と測量費用
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境界が決まっていない土地でも、売る道はあります。ただし先に、境界の何が決まっていないのかを分けて考えます。法務局が扱う「筆界」と、持ち主どうしの合意で動かせる「所有権界」は別のものです。
隣の持ち主が境界の確認に応じないときの公的な手続に、法務局の筆界特定制度があります。手数料は土地の価格で決まり、測量が入ると別に費用がかかります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は土地家屋調査士や弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
筆界と所有権界は別のもの
法務局の案内では、「筆界」は土地が登記されたときに、その土地の範囲を区切る線として定められたものです。所有者どうしの合意などで変えることはできません。不動産登記法123条1号も、一筆の土地とその隣の土地との間で、登記された時に境を構成するものとされた点とそれを結ぶ直線を筆界と定めています。

これに対して「所有権界」は、所有権の範囲を示す線です。売買や交換などで動くことがあります。法務局の案内は、筆界は所有権の範囲と一致することが多いとしつつ、一致しないこともあると書いています。
売るときに問題になるのは、境界標がない、隣の人と食い違っている、図面と現地が合わない、といった場面です。どの線についての食い違いかで、使う手続が変わります。
売るために境界を確かめる測量
日本土地家屋調査士会連合会の相談Q&Aは、土地の境界が確定するまでの流れを次のように示しています。

- 土地家屋調査士に依頼する
- 法務局や市区町村役場などで、公図や地積測量図などの資料を調べる
- 現地を測量する
- 集めた資料と測量の結果、現地の状況を精査する
- 仮の境界点を現地に復元する
- 隣接地の所有者や公共物の管理者と、現地で境界を確認する(境界立会)
- 確認した位置に境界標を設け、境界確認書を取り交わし、確定図面を作る
- 必要があれば登記を申請する
連合会は、事案や地域によって流れが異なることがあるので、依頼するときに土地家屋調査士に確かめるよう注記しています。測量の費用はこの資料に金額がないので、見積りを取って確かめます。
この流れの6番目で、隣の持ち主が立ち会わない、または位置に合意しないことがあります。その場合の道が、次の節の筆界特定制度と、後の節の調停や訴訟です。
筆界特定制度のしくみと手数料
筆界特定制度は、土地の登記名義人などの申請を受けて、法務局の筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地での筆界の位置や範囲を特定する制度です。申請は土地の所在地を管轄する法務局か地方法務局にします。所有者の相続人も申請できます(不動産登記法123条5号、131条1項)。共有者の1人でも単独で申請できると、東京法務局のQ&Aに書かれています。

法務局の案内が挙げる注意点は3つです。
- 筆界特定は、新たに筆界を定めるものではない。
- 所有権界がどこにあるかを特定することを目的としない。不動産登記法132条は、所有権の境界の特定などを目的とする申請を却下すると定めている。
- 結果に不服があるときは、筆界確定訴訟を起こせる。東京法務局のQ&Aは、筆界特定は行政処分ではなく、法的に不可争力をもって筆界を確定するものではないと説明している。
相手が協力しなくても、東京法務局のQ&Aによれば、測量や実地調査ができなくなるわけではありません。
手数料は、申請する土地と隣の土地の固定資産課税台帳の価格の合計を2で割り、0.05を掛けた額(算定基礎額)から、次の表で求めます。収入印紙で納めます。表は東京法務局のQ&A(更新日2015年12月21日)にあるものなので、申請の前に法務局で最新の額を確かめてください。
| 算定基礎額の区分 | 単価 |
|---|---|
| 100万円までの部分 | 10万円までごとに800円 |
| 100万円を超え500万円までの部分 | 20万円までごとに800円 |
| 500万円を超え1000万円までの部分 | 50万円までごとに1600円 |
| 1000万円を超え10億円までの部分 | 100万円までごとに2400円 |
法務省のパンフレットには、2つの土地の価格の合計が4,000万円のとき、手数料は8,000円になるという例があります。
手数料のほかに、測量が必要になると、その費用は申請人が負担します(不動産登記法146条1項)。法務局が概算額の予納を求め、予納しないと申請は却下されます。東京法務局のQ&Aは、測量費用は事案ごとに積算するとしたうえで、同局では概ね50万円から80万円くらいのものが多いと書いています。
かかる期間は法務局ごとに違います。東京法務局の標準処理期間は9か月です。横浜地方法務局は、令和7年10月1日受付分から、7か月を9か月に変えたと案内しています。売却の予定がある場合は、この期間を見込んでおきます。
隣地と話し合うとき、裁判になるとき
所有権界をめぐる争いは、筆界特定では扱えません。高知地方法務局の資料は、もうひとつの解決方法として、土地家屋調査士会などが運営する境界問題相談センターのADR(裁判外紛争解決手続)を紹介しています。

同じ資料によると、ADRは境界問題全般を対象とし、土地家屋調査士と弁護士が協力して和解の仲介をします。ただし、相手方の応諾がないと手続を進められません。和解が成立すれば、合意内容を書いた和解契約書を作ります。境界センターは裁判外紛争解決手続の認証を受けていると書かれています。
もうひとつの道が裁判所です。筆界確定訴訟で形成された筆界が筆界特定の結果と違うときは、筆界特定の内容は証明力を失います(東京法務局のQ&A)。時間と費用がかかるため、どの手続を選ぶかは、土地家屋調査士や弁護士に事情を伝えて決めます。
境界が決まらないまま買取に出す場合
境界の確認が済んでいない土地を、どう売るかは、買い手との契約の条件で決まります。確定測量を済ませてから売るのか、現況のまま売るのか。測量の費用をどちらが持つのか。決まった型を示す公的な資料は、今回は見つけられませんでした。

不動産会社が直接買い取る買取は、買い手を探す期間を置かずに話を進める売り方です。境界が未確定の土地をどう評価するかは、会社ごとに違います。査定を頼むときに、境界標の有無や隣地との食い違いを伝え、境界を確定してから売る場合と現況で売る場合の、条件の違いを聞いておくと比べやすくなります。
隣の土地との関係が絡む別の論点としては、私道の持分がない家を売るときも参考になります。
出典
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)123条・131条・132条・143条・146条 デジタル庁 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 (確認日 2026年11月4日)
- 筆界特定制度に関する“よくある質問” 東京法務局(更新日 2015年12月21日) https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/static/hikkai-qanda.html (確認日 2026年11月4日)
- 筆界特定制度のあらまし・手続の流れ 法務局 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu2/static/hikkaiSeido1.html 、 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu2/static/hikkaiSeido3.html (確認日 2026年11月4日)
- 筆界特定(パンフレット 平成28年3月) 法務省 https://www.moj.go.jp/content/000097508.pdf (確認日 2026年11月4日)
- 筆界特定申請の標準処理期間について 横浜地方法務局 https://houmukyoku.moj.go.jp/yokohama/standard/hikkai.html (確認日 2026年11月4日)
- 境界問題で困ったときは(筆界特定制度と調査士会ADR) 高知地方法務局 https://houmukyoku.moj.go.jp/kochi/content/000132304.pdf (確認日 2026年11月4日)
- 相談Q&A 日本土地家屋調査士会連合会 https://www.chosashi.or.jp/consulting/faq/ (確認日 2026年11月4日)