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相続放棄をした空き家の管理はどうなるか 民法940条の保存義務と相続財産清算人の申立て

内容の確認日: 2026年11月4日

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相続放棄をしても、空き家の管理の義務がなくなるとは限りません。民法940条は、放棄の時にその家を「現に占有している」人に、次の管理者へ引き渡すまで保存する義務を課しています。占有していない人には、この条文の義務は生じません。

占有者がいない空き家には、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人の制度を使う道があります。申立てには費用がかかり、予納金を求められることがあります。放棄を決める前に、売ったときの値段を確かめる道もあります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や司法書士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

放棄をしても管理が残る場面と残らない場面

相続放棄をした人は、民法939条により、初めから相続人にならなかったものとみなされます。そのため、原則として家の所有者としての責任も負いません。

草に覆われた空き家
写真: Kuroshio no Neko / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

例外が940条です。条文は次のとおりです。

  • 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または952条1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない(940条1項)。

条件は「放棄の時」に「現に占有している」ことです。国土交通省と総務省の令和5年3月31日付の事務連絡は、占有しているかどうかは個別の事案ごとに判断するとしています。そのうえで、自分の家財や荷物を家に置いている場合や、家の鍵を持っている場合は、占有者にあたる可能性があると例を挙げています。

同じ事務連絡は、占有者がいない場合について、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく略式代執行や、民法の相続財産清算人の制度を活用して空き家を処分することが想定されるとしています。

2023年の改正で何が変わったか

940条は、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)で条文が改められました。国土交通省の通知によると、この法律は令和5年(2023年)4月1日以降、順次施行されています。

竹林の中に残る空き家
写真: Kuroshio no Neko / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

改正後の条文には、保存義務を負う人を「放棄の時に現に占有している人」に絞る言葉があります。引き渡す相手も、相続人または相続財産の清算人と書かれています。

改正の前の条文の言い回しは、この記事では確かめていないので書きません。改正前の相続について調べるときは、相続が始まった日にどの条文が適用されるかを、法務局や弁護士に確認してください。

940条2項には、委任の規定(民法645条、646条、650条1項と2項)を準用するという定めもあります。保存のために使った費用などの扱いにかかわるので、実際に費用を立て替えたときは専門家に相談します。

相続財産清算人の申立てと予納金

相続人のあることが明らかでないとき、民法951条は相続財産を法人とします。裁判所のページは、相続人全員が放棄して相続する者がいなくなった場合も含まれるとしています。そして952条は、家庭裁判所が、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならないと定めます。選任したときは、家庭裁判所が公告をし、その期間は6か月を下ることができません。

宇都宮家庭裁判所の庁舎
写真: Miyuki Meinaka / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

裁判所の公式ページには、申立てについて次のように書かれています。

  • 申立てができる人: 利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)と検察官
  • 申立先: 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 収入印紙: 800円分
  • 連絡用の郵便切手: 郵便料は裁判所ごとに異なる
  • 官報公告料: 5,582円。家庭裁判所の指示があってから納める
  • 予納金: 相続財産の内容から、管理に必要な費用(清算人への報酬を含む)に不足が出る可能性がある場合に、申立人に相当額の納付を求めることがある

予納金の額は、裁判所のページには書かれていません。事案ごとに決まるため、申立てを考える段階で、最後の住所地の家庭裁判所に問い合わせるのが確実です。

放棄した人が「利害関係人」として申立てできるかどうかは、裁判所のページの例には出てきません。この記事では確かめられていないので、申立てを考えるときは家庭裁判所か弁護士に確認してください。

放棄の前に売値を確かめる

古い木造住宅が並ぶ通り
写真: NevinThompson / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

放棄すると決める前に、その家と土地がいくらで売れるかを知っておくと、判断の材料が増えます。売れる値段が管理や解体の費用を上回るなら、相続したうえで売るほうが、負担が少ないこともあります。

相続人は、承認や放棄をする前に、相続財産を調べることができます(民法915条2項)。熟慮の期間は、相続があったことを知った時から3か月以内で、家庭裁判所で伸ばすことができます(915条1項)。

売り方の一つに、不動産会社が直接買い取る買取があります。買い手を探す仲介とは仕組みが違います。傷みが大きい家や、荷物が残った家をどう扱うかは会社ごとに違うので、査定を頼むときに確かめます。

空き家の管理が行き届かなくなったときの市区町村の動きは、管理不全空家・特定空家になった実家を売るときで扱っています。相続登記がまだのときは、相続登記をしていない実家を売るときが参考になります。

放棄をするなら先にやってはいけないこと

民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めます。ただし、保存行為と、602条の期間を超えない賃貸は例外です。

朱肉と印影が並ぶ判子
写真: Culture Japon / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

家を売る、解体する、価値のある家財を処分するといった行為は、処分にあたるおそれがあります。放棄を考えている間は、売買や解体の契約を結ぶ前に、家庭裁判所や弁護士に確認します。雨漏りを防ぐ応急処置や、倒れそうな塀の補強のような、現状を保つための行為が保存行為にあたるかどうかも、同じく確認します。

放棄の申述は、家庭裁判所に対して行います(938条)。申述が受理されても、その時に家を占有していれば、940条の保存義務は続きます。引き渡し先がいないときは、前の節の清算人の申立てが次の段階になります。

放棄するか、相続して売るか、国に引き渡す制度を調べるかは、国庫帰属制度で手放すか売るかと見比べると整理しやすくなります。

出典

  • 民法(明治29年法律第89号)938条・939条・940条・915条・921条・951条・952条 デジタル庁 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (確認日 2026年11月4日)
  • 相続財産清算人の選任 裁判所 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html (確認日 2026年11月4日)
  • 民法等の一部を改正する法律の施行等について(国土交通省不動産・建設経済局土地政策課長・住宅局住宅総合整備課長 令和5年3月31日) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001618279.pdf (確認日 2026年11月4日)
  • 事務連絡 令和5年3月31日(国土交通省住宅局住宅総合整備課・総務省地域力創造グループ地域振興室) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001711895.pdf (確認日 2026年11月4日)

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