訳あり不動産の売り方

入居者がいる家・賃貸中の物件を売るとき 賃貸借の引き継ぎと敷金の扱い

内容の確認日: 2026年11月2日

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入居者がいる家を売っても、入居者との賃貸借契約は終わりません。売買のあとは、買主が貸主(賃貸人)の立場を引き継ぐのが原則です。入居者が貸主の変更に同意する必要はありません。

このとき、預かっている敷金も買主に引き継がれます。一方、入居者に出て行ってもらうには、借地借家法が定める「正当の事由」などが要ります。売りたいという事情だけで、簡単に退去は求められません。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や不動産会社などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

売っても賃貸借は続く

借地借家法第31条は、建物の賃貸借は登記がなくても、建物の引渡しがあれば、その後にその建物の権利を得た人に対して効力を生じると定めています。入居して住んでいる賃借人は、家が売られても、契約を買主に主張できます。

2階建ての木造アパート
写真: MC MasterChef / CC BY-SA 2.5(Wikimedia Commons)

民法第605条の2第1項は、この対抗要件を備えた賃貸借で不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位が譲受人に移転すると定めています。賃貸借の条件は、そのまま買主に引き継がれます。賃料の額や契約期間も変わりません。

賃貸人の地位を移すのに、入居者の承諾は要りません。民法第605条の3は、譲渡人と譲受人の合意で移転させられると定めています。ただし、売主が入居者へ売却を知らせるかどうかは、別の問題です。買主が賃料を受け取る手続きを入居者に伝えないと、入居者が払い込み先を間違えるおそれがあります。

敷金と賃貸人の地位の移り方

民法第605条の2第4項は、賃貸人たる地位が移ったとき、敷金の返還債務と、入居者が支出した必要費などの償還債務を、譲受人が承継すると定めています。売主が預かっていた敷金は、買主が返す立場になります。

札幌の集合住宅に並ぶバルコニー
写真: Sgroey / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

敷金の返還額は、民法第622条の2に定めがあります。賃貸借が終わり、賃貸物の返還を受けたときに、受け取った敷金の額から、賃借人の債務の額を差し引いた残りを返します。

実際の売買では、敷金の扱いを契約書にどう書くかが論点になります。たとえば売主から買主へ敷金相当額を引き渡す、代金から差し引くなどです。どの方法にするかは、法律では決められていません。売買契約書に、敷金の額と引渡しの方法を書いておきます。

賃貸人の地位が移るには、もう1つ条件があります。民法第605条の2第3項によると、所有権の移転登記をしなければ、賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗できません。買主が入居者へ賃料を請求するには、登記を済ませておく必要があります。

賃貸人の地位を売主に残す方法もあります。民法第605条の2第2項は、譲渡人と譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨と、買主が売主にその不動産を賃貸する旨を合意したときは、地位は移転しないと定めています。この形をとるかどうかは、買主との契約内容で決まります。

入居者に退去してもらうことはできるか

空き家にして売りたいと考えても、入居者に出て行ってもらうには条件があります。借地借家法の定めを整理します。

ベランダが並ぶ集合住宅
写真: Tamaki Sono / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
  • 第26条: 期間の定めがある賃貸借は、満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知をしなければ、同じ条件で更新したものとみなされる。
  • 第27条: 貸主が解約を申し入れると、申入れの日から6か月を経過して契約が終了する。
  • 第28条: 貸主からの更新拒絶の通知や解約の申入れは、正当の事由があると認められる場合でなければできない。

第28条は、正当の事由の判断で、貸主と借主が建物の使用を必要とする事情のほか、従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、貸主が明渡しの条件として申し出る財産上の給付などを考慮すると定めています。第30条により、この節の規定に反する特約で借主に不利なものは無効です。

売却したいという理由が、正当の事由に当たるかどうかは、条文だけでは決まりません。個別の事情で判断されるため、弁護士に相談するのが確実です。

契約が定期建物賃貸借(第38条)のときは、話が変わります。公正証書などの書面で、更新がない旨を定めた契約です。貸主はあらかじめ、更新がなく期間満了で終了することを書面で説明する必要があり、説明しなかったときは、更新がない旨の定めは無効になります。期間が1年以上のときは、満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知をします。

契約の種類は、賃貸借契約書で確かめます。

売り方の選択肢

入居者がいる家の売り方は、主に3つです。

道路沿いに続く大規模な集合住宅
写真: Kentin / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)
  • 入居者がいる状態で売る(オーナーチェンジ): 賃貸借を引き継ぐ買主に売ります。内見が難しい点は、買主と調整します。
  • 契約の終了を待ってから売る: 期間満了や、入居者の都合による退去の後に、空室で売ります。待つ間は、賃料は入りますが売却は先になります。
  • 不動産会社に買い取ってもらう: 賃貸中のまま買い取ってもらえるかどうかは、査定を頼む段階で確かめます。

どの方法でも、買主が知りたいのは次の情報です。早めにそろえておくと、話が進みます。

  • 賃貸借契約書(賃料、期間、更新の条件、定期借家かどうか)
  • 預かっている敷金の額
  • 賃料の支払い状況と、滞納があるかどうか
  • 入居者から修繕の申し出があったかどうか

修繕については、民法第606条第1項が、賃貸人は賃貸物の使用と収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています。売るときに残っている修繕の話は、買主に伝える内容になります。

売却前に、物件の不具合を整理する方法は、物件状況報告書の記事に書きました。

入居者への連絡と引渡しの段取り

売買が決まったら、入居者への連絡を決めておきます。

住宅やアパートに面した舗装済みの駐車場
写真: Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
  1. 売買契約書で、賃貸人の地位が買主に移る日(引渡し日)と、敷金の扱いを決める。
  2. 引渡し日までに、所有権移転の登記を進める。
  3. 入居者に、貸主が変わること、新しい貸主の名前、賃料の振込先を、書面で知らせる。
  4. 賃貸借契約書、鍵、修繕の記録などの書類を、買主に引き渡す。

入居者の側から見ても、貸主の変更は大きな出来事です。賃料の払い込み先、修繕の連絡先、更新のときの手続きの窓口が、すべて買主に移ります。売主は引渡し日までに、賃貸借契約書や鍵、過去の修繕の記録をまとめておくと、買主への引き継ぎが滞りにくくなります。

手順のうち、民法に書かれているのは、地位の移転、登記による対抗、敷金の承継です。通知の方法や時期は、法律では決められていません。売主、買主、不動産会社で話し合って決めます。賃料を日割りで分ける取り決めも、契約書に書いておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。個別の賃貸借契約の内容によって扱いが変わります。判断が難しいときは、契約書を持って弁護士に相談してください。

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