越境がある土地を売るとき 隣地との確認と覚書で決めておくこと
この記事には広告(PR)のリンクがあります。広告の方針
越境がある土地でも、売ることはできます。ただし、越境の場所と中身を隣の人と確かめ、書面に残しておかないと、買う人が不安を持ちやすくなります。民法には、越境した枝の切り取りや、測量のための隣地の使用など、使える決まりがあります。
越境の覚書そのものを定めた法律は、この記事で確かめた範囲にはありません。内容は、隣の人と買主の間で個別に決めます。この記事は一般的な情報で、個別の判断は土地家屋調査士や弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
越境とは何か、どこで見つかるか
越境とは、建物の一部や塀、樹木の枝や根などが、境界線を越えて隣の土地に入り込んでいる状態です。自分の物が隣に出ている場合と、隣の物が自分の土地に出ている場合があります。

越境は、売る前の測量や境界の確認で見つかることが多くなります。境界標が見当たらない、塀の位置と図面が合わない、といった場面です。そもそもどの線が境界なのかが決まっていない場合は、先に境界が決まっていない土地の記事で説明した筆界と所有権界の違いを押さえます。
調べる物の例は、次のとおりです。
- ブロック塀やフェンスの位置
- 屋根の先端や庇が境界線を越えていないか
- 樹木の枝と根
- 境界標の有無と位置
民法が決めている隣地との関係
越境そのものの扱いを細かく決めた条文は多くありませんが、次の条文は売る前の確認で使えます。

越境した枝と根(民法233条)
隣の土地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に枝を切除させることができます。切除を催告しても相当の期間内に切除されないとき、所有者を知ることができないとき、急迫の事情があるときは、自分で枝を切り取れます。根が境界線を越えるときは、自分で切り取れます。
法務省の資料によると、この枝の切り取りの規定を含む相隣関係の見直しは、2023年4月1日に施行されました。
測量や境界標の調査のための隣地の使用(民法209条)
土地の所有者は、境界標の調査や境界に関する測量、境界付近の工作物の築造・収去・修繕などの目的で、必要な範囲で隣地を使えます。次のような決まりがあります。
- 使う日時・場所・方法は、隣地の人に最も損害が少ないものを選ぶ
- あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地の所有者と使用者に通知する
- 住家には、居住者の承諾がなければ立ち入れない
- 隣地の人が損害を受けたときは、償金を請求できる
境界標や塀の扱い(民法229条)
境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝、堀は、隣り合う人の共有と推定されます。越境の話をするときは、塀が誰の物なのかも一緒に確かめます。
境界線付近の建築(民法234条・235条)
建物を築造するときは、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければなりません(234条1項)。これに反して建築しようとする人がいるとき、隣地の所有者は建築を中止させ、または変更させることができます。ただし、建築に着手した時から1年を経過したとき、または建物が完成したあとは、損害賠償の請求だけができます(同条2項)。
境界線から1メートル未満の距離で、他人の宅地を見通せる窓や縁側(ベランダを含む)を設ける人は、目隠しを付けなければなりません(235条)。ただし234条と235条は、異なる慣習があればその慣習に従うとされています(236条)。越境だけでなく、境界線との距離も、現地で一緒に確かめる項目になります。
売る前に隣地と確かめる流れ
順番は次のように考えると整理しやすくなります。

- 登記事項証明書や測量図、境界標の位置を確かめる。
- 必要なら土地家屋調査士に測量を頼み、越境の有無と大きさを図にする。
- 隣地の人に連絡し、現地で境界の位置と越境の内容を一緒に確かめる。
- 確かめた結果を書面にする。境界の確認書と、越境の扱いを決めた覚書は、別の書類にすることもあります。
- 不動産会社に、越境があることを伝えたうえで査定を頼む。
隣の人に連絡する前に、越境の内容を図や写真で整理しておくと、話し合いが具体的になります。連絡は、測量の日程が決まる前の早い時期にしておくと、民法209条の通知の考え方とも合います。
覚書で決めておきたい点と、売買契約への書き方
覚書の書式を定めた決まりは、確かめた法令・資料の中にありませんでした。ここでは、決めておかないと後で困りやすい点を、問いの形で挙げます。実際の書き方は、専門家と相談して決めてください。

- どの物が、どの位置から、どれだけ越境しているか(測量図を付けるか)
- 越境している物を、いつまでに、誰の費用で直すか。建て替えや取り壊しのときに直す約束にするか
- 土地の持ち主が変わったとき、約束を引き継ぐか。買主に引き継ぐ旨を書くか
- 隣の人が立ち入る必要があるとき、事前に連絡するか
売買契約のほうでは、売主が知っていた事情を伝えない場合の責任に注意が要ります。民法562条は、引き渡した物が契約の内容に適合しないとき、買主が修補などの履行の追完を請求できると定めています。563条は代金の減額、566条は、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと、請求できなくなると定めています。
特約で責任を負わないと決めても、知りながら告げなかった事実の責任は免れません(民法572条)。越境が契約の内容に適合しない事情にあたるかどうかは、契約書の書き方と事情で変わります。越境を知っているなら、契約の前に買主へ伝え、契約書にも書いておくのが筋です。
隣地の人が応じないとき
隣の人が境界の確認に応じない場合の手続のひとつに、法務局の筆界特定制度があります。法務局の案内によると、この制度は登記された時に定められた筆界の現地での位置を明らかにするものです。

同じ案内は、筆界特定には当事者の権利義務を決める効力がないと説明しています。このため、筆界が特定されたあとも、境界標の埋設や塀などの越境物の撤去は、当事者どうしで合意する必要があります。合意が難しい場合は、裁判や、裁判外紛争解決手続(ADR。千葉の案内では土地家屋調査士会の境界問題相談センターが例に挙がっています)を使う方法があるとされています。
長く占有を続けた人が所有権を取得する時効の規定もあります(民法162条は、20年、または一定の条件で10年の占有を定めています)。越境部分にこれが当てはまるかは、占有の経過で変わります。自分で決めずに、売る前に専門家へ相談してください。
越境を抱えたまま売る場合は、複数の会社に査定を頼み、越境がある土地の扱いを聞いておくと、条件を比べやすくなります。
出典
- 民法(e-Gov法令検索・162条、209条、229条、233条、562条、563条、566条、572条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(令和5年4月1日施行) https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf
- 千葉地方法務局(法務省)「筆界特定制度について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/chiba/static/hikkai.html
いずれも2026年11月4日に確認しました。