浸水想定区域・土砂災害警戒区域にある家を売るとき 重要事項説明と売主の準備
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浸水想定区域や土砂災害警戒区域にある家でも、売ること自体は禁じられていません。売るときに起きるのは、不動産会社が買主へ、水害ハザードマップ上の所在地や警戒区域に入っていることを重要事項説明で伝える、という手順です。
説明の義務を負うのは宅地建物取引業者です。売主が自分で説明書を作るわけではありません。売主に求められるのは、知っている被害や不具合を正直に伝えることです。この記事は一般的な情報で、個別の判断は不動産会社や弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
重要事項説明で伝わる項目
宅地建物取引業法第35条は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が重要事項を説明するよう定めています。媒介(仲介)のときは、条文上、買主と売主の各当事者が説明を受ける相手方に含まれます。

災害に関わる項目は、宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3に並んでいます。宅地や建物の売買では、次のものが対象です。
- 第1号: 造成宅地防災区域(宅地造成及び特定盛土等規制法第45条第1項)にあるときは、その旨。
- 第2号: 土砂災害警戒区域(土砂災害防止法第7条第1項)にあるときは、その旨。
- 第3号: 津波災害警戒区域(津波防災地域づくりに関する法律第53条第1項)にあるときは、その旨。
- 第3号の2: 水防法施行規則第11条第1号で市町村長が提供する図面に位置が表示されているときは、その図面での所在地。
第3号の2が、水害ハザードマップの説明です。国土交通省は、この改正を2020年(令和2年)7月17日に公布し、同年8月28日に施行しました。土砂災害特別警戒区域については、次の見出しで説明します。
買主が宅地建物取引業者のときは、買主への説明は不要で、書面の交付だけで足ります(宅地建物取引業法第35条第6項)。買取業者に売る場合の流れは、一般の買主に売る場合と少し違います。
水害ハザードマップの説明のされ方
国土交通省のQ&Aによると、対象は水防法第15条第3項に基づき、市町村が提供する洪水、雨水出水(内水)、高潮のハザードマップです。次の点が示されています。

- マップを見せながら、物件のおおよその位置を示す。地番まで正確に示す必要はない。
- 物件が浸水想定区域の外にあっても、マップ上の位置を示す。そのときは、区域外なら水害のリスクがないと相手方が誤解しないよう配慮する。
- マップが河川ごとに作られ、物件が複数のマップに含まれるときは、それぞれについて説明する。
- 平成27年の水防法改正より前に作られた古いマップでも、現行法のマップと見なされるため、説明の対象になる。
- 市町村のホームページに載っているマップを、最新のものとして使ってよい。
- 市町村が水防法に基づくマップを作っていないときは、「水防法に基づく水害ハザードマップは作成されておりません」と説明する。
ため池ハザードマップや浸水実績図は、水防法に基づくものではないため、この説明義務の対象外です。避難所の位置を示すことは義務ではなく、望ましいとされています。
国土交通省が運営するハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)から、各市町村のマップを見られます。売る前に自分でも開いておくと、不動産会社との話が早く進みます。
土砂災害警戒区域と特別警戒区域の違い
土砂災害防止法は、都道府県知事が2種類の区域を指定すると定めています。

- 土砂災害警戒区域(第7条): 急傾斜地の崩壊などが起きると住民の生命や身体に危害が生じるおそれがあり、警戒避難体制を特に整えるべき区域。
- 土砂災害特別警戒区域(第9条): 警戒区域のうち、建築物に損壊が生じて著しい危害が生じるおそれがあり、一定の開発行為の制限と居室を有する建築物の構造規制をすべき区域。
特別警戒区域では、住宅(自己の居住用を除く)などの建築を目的とする開発行為に、都道府県知事の許可が要ります(第10条)。居室を有する建築物には、土砂災害の衝撃に対して安全な構造の基準が定められます(第24条)。
宅地建物取引業法施行令第3条は、売買で説明する法令上の制限として、土砂災害防止法第10条第1項と第17条第1項の許可を挙げています。特別警戒区域の土地や建物では、この制限も説明の対象です。
警戒区域を指定したとき、都道府県知事は公示し、関係する市町村長へ図書を送ります(第7条第4項・第5項)。特別警戒区域では、市町村が図書を一般の縦覧に供します(第9条第7項)。具体的な範囲は、都道府県や市町村のページで確かめます。
売主が準備すること
説明は不動産会社が行いますが、売主が準備できることがあります。

- 市町村のホームページやハザードマップポータルサイトで、自分の家の位置を確かめる。
- 過去に浸水したことや、土砂が流れ込んだことを覚えていれば、メモにしておく。
- 雨漏り、擁壁のひび、排水の不具合など、知っている不具合を整理する。
知っている事実は、物件状況報告書(告知書)に書きます。書き方は、物件状況報告書の記事で扱っています。
民法第572条は、担保責任を負わない特約をしていても、知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。また、民法第566条は、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと、請求できなくなると定めています。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この期限は当てはまりません。
浸水想定区域や警戒区域に入っていること自体が、契約不適合に当たるかどうかは、今回確認した国の資料には書かれていませんでした。契約書の特約の書き方を含め、弁護士などに確かめるのが確実です。擁壁やがけ条例の確認は、擁壁とがけ条例の記事にまとめています。
買い手が限られるときの売り方
区域に入っている家は、買主が条件を気にして、探す人が絞られることがあります。そのため、売り方を2つ並べて考えます。

- 仲介で一般の買主を探す: 重要事項説明を受けた買主と契約します。売主の契約不適合責任は、契約書の内容で決まります。
- 不動産会社に買い取ってもらう: 買主が宅地建物取引業者なので、買主への口頭の説明は不要です。契約不適合責任の扱いは、契約書で確かめます。
国民生活センターは、自宅を不動産業者に売却した場合は宅地建物取引業法のクーリング・オフができず、契約が成立すると無条件では解除できないと注意しています。売主が解除するときは手付金の倍額を払う「手付倍返し」になり、期間を過ぎると違約金が必要になるのが一般的です。売却後に雨漏りやシロアリで修理費を求められる例もあるため、責任に関する条項を契約前に確認します。
どちらを選ぶかは、急ぐかどうかと、手元に残したい金額で変わります。複数の会社に見積もりを依頼して比べると、条件の違いが見えてきます。
出典
- 宅地建物取引業法施行規則 第16条の4の3(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50004000012
- 宅地建物取引業法 第35条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- 宅地建物取引業法施行令 第3条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000383
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000057
- 民法 第566条・第572条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 国土交通省 報道発表資料「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」 https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000205.html
- 国土交通省 宅地建物取引業法施行規則の一部改正(水害リスク情報の重要事項説明への追加)に関するQ&A(令和2年7月17日現在) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001354700.pdf
- 国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」(2021年6月24日) https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20210624_1.pdf
いずれも2026年11月4日に確認しました。市町村のマップや区域の指定は更新されることがあります。売る前に、最新の内容を市町村や都道府県のページで確かめてください。